ちょっと贅沢な普段使い単焦点レンズ「Nikon AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G」
ニコンの大口径単焦点レンズ「AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G」を数ヶ月前に入手したので、今回はこの件について書いてみたいと思います。
このレンズを入手するまでは、35mm単焦点レンズは同じニコンの「AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED」を使っていましたが買い替えです。
両者の違いはざっくり言って開放F値が「1.8」か「1.4」かの違い。
と、いうことで主なスペックを比較してみます。
【AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED】
サイズ:太さ72mm×長さ71.5mm
重量:305g
フィルター径:58mm
最短撮影距離:0.25m
実売価格:5.7万円前後
発売時期:2014年2月
【AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G】
サイズ:太さ83mm×長さ89.5mm
重量:600g
フィルター径:67mm
最短撮影距離:0.3m
実売価格:18.1万円前後
発売時期:2010年11月
(価格は2017年末時点でのネット通販価格です。ショップにより大きく異なる場合があります)
重さは2倍、価格は3倍で負担は大きめ。
「f/1.8」に比べると「f/1.4」はおおよそ重さは2倍、価格は3倍。
体力にもお財布的にも負担は大きめ。
「本当にそれだけの価値があるレンズなの?」と、どうしても考えてしまいます。
レンズ構成図を見ても、前から後ろまでレンズが結構ぎっちり入っていて、いかにもコストがかかっていそうな贅沢な造り。レンズ構成図はこちら(ニコンホームページ)
レンズの動くスペースも少なめ。
「これでも頑張ってコンパクトにしたんだよっ!」
というレンズ設計者の人の声が聞こえてきそうです(聞いてませんが)。
特に前玉直後にはガラスの塊のような分厚いレンズがあり、「こりゃ重くて高いのも仕方ないよね」とは思うのですが。
一方で「f/1.8」はなぜか微妙に抜けが悪くどんよりした絵に写ることが多い感じ。ボケも少々硬い印象なのも気になるといえば気になるところ。(個体差かもしれませんし、2014年2月の発売直後に購入したので現在のものは改善されているかもしれません)
ピントリングの操作感が安っぽいのも(仕方ないとは思いつつ)やっぱり物足りない。
…ということでf/1.8は下取りに出して、ついでに使用頻度の少ないレンズも下取りに出して(手元のレンズが結構増えていたので)、差額で35mm f/1.4にアップグレードしました。
差額は5万円ちょっと。これでアップグレードできるのならまあ良いのではないかということで。
D750ボディより高い、ということで少々手の出しにくいレンズ
ちなみにメーカー希望小売価格は税別で24万円。
8%の消費税を加算すると25.92万円。つまり約26万円。
発売時期も2010年11月と、決して新しい設計のレンズではないのに随分高価です。
実際にはネット通販で18万ちょいくらい。最安値で税込17万円半ばくらいですが、それでもD750ボディより価格が高い(お店により異なります)、ということで少々手の出しにくいレンズではあります。
しかしながら個人的には35mmという画角は結構よく使う、重要な焦点距離。
シグマの35mm F1.4やタムロンの手ブレ補正付き35mm F/1.8(F012)も良さそうだったのですが、今回は永く満足して使えるものを選んだ方が良いだろうということでニコン純正35mm f/1.4Gレンズを選びました。
今年(2017年)9月に入手したD850(←過去記事)との組み合わせはサイズと重量のバランスは良好かと思います(下の写真)。
とりあえずこの「AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G」の長所と短所(かもしれないところ)を下記に並べてみます。
【良いところ】
・ボケ味の美しさ
・f/1.4が使える(2段絞ってもf/2.8の明るさ)
・最短撮影距離0.3mでかなり寄れる(f/1.8には少々負けますが。)
・フォーカスリングの滑らかさ
・細部まで手抜きの見られない、丁寧な造り込み
・しっかりした作りのレンズフード
・品が良く高級感ある佇まい
・DX機では52.5mm相当の標準画角で使える汎用性の高さ
・本体もレンズフードも日本製
【弱点かもしれないところ】
・単焦点レンズとしては結構重い(600g)
・サイズも大きめ(最大径x長さ:83×89.5mm)
・触るとわかる、プラスチックの鏡胴外装(気にする人は気にするらしい)
・手ブレ補正機能がない(f/1.4なのでなくてもOK?)
・価格が高い(ネット通販最安値でも17万円台後半)
・少し古い(発売日:2010年11月19日)
値段の高さ以外は「弱点」と見るかどうかは意見が分かれそうなので「かもしれない」としています。
まずは外観と細部の作り込みを眺め回す
で、その35mm f/1.4Gですが、手に取るとやはりずっしり重い。
その代わり細部の造り込みは価格相応の良さがあります。
同じニコンの58mm f/1.4G同様のプラスチック外装ですが、鏡胴の塗装の質感も良く、エッジもビシッと立っていて、チープな印象はないです。
(「AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G」の過去記事はこちら)
フォーカスリングのタッチも滑らかですが、プラスチックの擦れる感触は若干あり。
前玉周囲に刻まれた同心円状のグルービングも細く、シャープで精緻な印象。
フィルタ径はちょっと控えめな67mm。
鏡胴先端までせり出している前玉は結構存在感があります。
レンズ装着時の指標も小さな白い点が刻まれているのみ。デザインは全体にすっきり系。
レンズフードも肉厚のしっかりしたものが付属します。
ちなみにレンズ本体、フード共にMade in Japan。フードのロックはないのですが、適度なクリック感があるので、「気づいたらレンズフードがズレていた」ということは多分なさそう。
58mm f/1.4付属のレンズフード「HB-68」(上の写真左)は薄っぺらくて頼りない印象ですが、この35mm f/1.4付属のレンズフード「HB-59」(上の写真右)はしっかりしています。
同じメーカー製なのにどうしてこんなに違うのかは不明。
フード装着状態で58mm f/1.4と35mm f/1.4を並べて撮影(下の写真)。左の58mm f/1.4は太く、短く、ごつい印象なのに対し、右の35mm f/1.4は曲線的で優しい印象です。
外観的にはすっきりしたデザインのせいか派手さはありませんが、サイズと重量感、ビルドクオリティの高さのおかげで「良い道具」感はあると思います。
先述の通り単焦点レンズとしては少々重いのですが、フルサイズ(FX)ボディと組み合わせて使うには良好な重量バランスと思われます。APS-C(DX)ボディだと機種によっては少しフロントヘビーになるかもしれないですね。
「寄れる」ことは35mm単焦点の大きな長所
写りに関しては58mm f/1.4Gと似ている感じで、合焦点から滑らかにアウトフォーカスして行くボケ味の柔らかさが印象的。そして何と言っても35mm単焦点は「寄れる」のが強み。
58mmはあまり寄れないのですが、この35mm f/1.4は最短撮影距離が0.3m。つまり30cm。
この「30cm」というのは撮像面(つまりイメージセンサー)からの距離(下の写真のように)なので、レンズフードを装着した状態ではフード先端から被写体までは13cm程度まで寄れることになります。(実際には11cmくらいまで寄れるようです)
後から発売された(2014年2月発売)「AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED」は最短撮影距離が0.25mと、スペック上では5cm負けています。そのため小さめの被写体にグッと近寄るとピントが合わせられないことがたまにありますが、それでもかなり「寄れる」レンズではあります。
この「寄れる」ことは35mm単焦点の大きな長所の一つだと思ってます。
そして「引いて」(つまり離れて)撮ればそこそこ広い範囲も撮影できる、ということで室内撮りから風景撮影までかなり幅広いシチュエーションで使える。
フルサイズセンサーやAPS-Cセンサーに35mm相当の単焦点レンズを組み合わせたコンデジを発売している会社もありますが、やはり「汎用性の高さ」という面では35mm単焦点というのは使いやすい画角の様子。
絞り開放f/1.4の誘惑とリスク。2段絞れば安心
f/1.4の魅力を満喫したいなら絞り開放で背景をぼかしまくるのもあり、かもしれないのですが。。。
大きなボケをコントロールするのもテクが必要なようで、ともするとボケすぎてなんだかわからない写真を量産しがちではあります。というわけで絞り開放(f/1.4)で撮影した写真を2点。
上の写真はまあまあマトモに撮れているかな?という感じですが、口径食で画像周囲のボケがレモン型になってしまっておりまして、こういうのも気になり始めると気になって仕方ない。
また、点光源をf/1.4の絞り開放で撮影すると画面周辺に「サジタルコマフレア」が微妙に発生します。点光源が蝶が羽を広げたような形になってしまう、という例のアレですね。
上の画像の左上の端の方を等倍に拡大したのが下の写真。
これがいわゆる「サジタルコマフレア」。
これでもよく抑えられている方なんだろうなと思いますが。
絞り開放は刺激的で楽しい一面もあるのですがリスクもある、ということでその辺の使いこなしは撮影者に委ねられている、ということかなと。「f/1.4の世界」に足を踏み入れようという者には相応の技量を求められるのは必然なのでしょう。多分。
それはともかく、2段絞ってf/2.8で撮れば口径食もサジタルコマフレアもほぼ解消するので、基本は絞りを開けるのはf/2.8までにしておくと安心といえば安心。フルサイズでf/2.8なら十分ボケるということで。
逆に言えば、2段絞ってもf/2.8の明るさが使えるというのは凄いことだと思います。
とか言いながら誘惑に負けて無駄に絞り開放で撮影してしまうこともしばしばなのですが。
標準レンズは35mmなのか、50mmなのか?
「標準レンズは35mmなのか、50mmなのか?」というのは銀塩カメラ時代から議論になっていた問題のようで、結論から言えば「好みのものを使えば良いでしょう」ということになるのですが、個人的には35mmが好みかなと思っています。
上の写真は58mmレンズと35mmレンズですがご容赦ください。
(50mm f/1.4は全然使わないので下取りに出してしまいました)
50mmは画角が狭目で多少の「望遠効果」も入ってくるので、視界に入るものをなんでも撮影する、というわけにはいかない。画角の中に何を入れて、何を入れないかという「引き算の構図づくり」をする必要があり、フレーミングがシビアになる傾向がある。
それゆえに良い「作品」に仕上がりやすい傾向もあると言えばあるのですが。。。写真学校などでは50mmの画角を徹底的に叩き込まれるという話を聞いたこともありますし。(真偽のほどは不明)
そして50mm単焦点レンズは大抵最短撮影距離が少し長め。だいたい45cm前後程度。よってテーブルフォトなどには少々厳しい。
対して35mmは一応「広角レンズ」に分類されるレンズなので少々ユル目の雰囲気。シビア過ぎないのが気持ち良いというか気楽というか。その分望遠効果は薄く、パース歪みも多少出ますが、24mmなどに比べればそれも控えめ。
先述のように被写体に近寄って撮影するもよし、引いて撮ってもよしと対応範囲の広さも魅力。
中庸の徳これに極まれり、であります。
加えて開放f/1.4の明るさがあれば、絞るのも開けるのも自由度が高くてこれまた便利。
とりあえずカメラに装着しっぱなしにしておいて、撮りたい時にすぐ撮れる。
f/2.8大口径ズームレンズほど大きく重くもないですし。
ということで個人的には「35mm f/1.4単焦点レンズ」はちょっと贅沢な「普段使いレンズ」となっています。
結果オーライだった(?)ニコン100周年
そんなわけで2017年ももうすぐ終了です。
ニコンとしては今年は100周年にあたる記念すべき年だったのですが、
「2017年3月期の連結最終損益が90億円の赤字」
「本社とグループ会社が募集した希望退職に、1,143人が応募した」
「高級コンデジ『DLシリーズ』3機種の発売中止決定」
など暗いニュースが続き、ニコン創立100周年の日(7月25日)も、D850の「開発」の発表(発売ではない)しかなかったことでニコンファンのフラストレーションはピークに達した感じでした。
世の中的な期待とのギャップがあまりにも大きすぎて、個人的にもニコンの経営状況を本気で心配しましたが…
8月24日正午のD850発表で一気に流れが変わりましたね。
ここまで爆発的な大ヒットって、ちょっと記憶にないレベルで、発売後4ヶ月が経とうとしているのに未だ品薄状態。生産工場の方々は大変かもしれませんが「売れすぎて困る」とはなんとも贅沢な悩みというか景気が良い話ではあります。D850入荷待ちのまま年を越す方もおられるようなので、喜んでばかりもいられないのでしょうけど。
ともあれニコン100周年は結果オーライだった、ということで良いのでしょうか?
来年も期待しております。